最大限に活用を
最大限に活用を
「ねぇシラタマ、僕は常々思っていることがある。」
「今は黒岡野しじまと呼べ。相澤虹一。」
「シラタマっていっつもさんの膝の上にいるじゃん。あれ、どんな気分?」
「だから黒岡野しじまと呼べ。」
「僕としてはキミのことが羨ましくて羨ましくてたまらないんだ。だって膝だよ?さんの膝。」
「別に普通ではないか。」
「普通じゃないよ。僕がどれだけさんに甘えても、膝に乗せてもらうなんて出来ないんだよ?襲い掛かったらいくらでも上に乗れるけどさ。まぁ、僕紳士キャラだし。」
「原型に戻ればいい話だろう。…ちょっと待て、今なんていったお前。」
「僕の原型は膝に乗せてもらえるようなもんじゃないんだよ。むしろ肩だって、肩。」
「ごたごた言うな、生まれ持ってきたものの違いを今更嘆いても仕方ない。…流されたが、さっき変な発言してなかったか?」
「なんで森羅万象は僕の原型をシラタマにしてくれなかったのかな。あーもう残念だ、森羅万象に頼んでみようか。」
「そうだな、頼むとしたら今度はコケシにでもしてもらえ。」
「コケシは今でもついてるって。」
「……死ね。…ああ、が呼んでいる。では私は行くからな。」
虹一の目の前で、しじまの体が溶けるように崩れ去る。
アルヤの制服がフワリと宙に舞い、地面に落ちると、その下から一匹の白い猫が現れた。
猫はシラタマと彫り込まれたネームプレートを器用に首に引っさげ、一目散に走り去る。
行き着く先に居るのはで間違いないだろう。
「…猫、いいなぁ。」
虹一の小さい呟きは風に乗って、めがけて駆けるシラタマにも届いたが、彼女は無視した。
生物は持って生まれたものを駆使して生きてゆく。だから、森羅万象に作られたシラタマも、そうやって生きている。
シラタマは、ようやくたどり着いたの胸元めがけて跳躍した。
抱きこまれる腕のぬくもりも、胸の柔らかさも、全部独り占めしてやるために。