大切なのは、一瞬で
大切なのは、一瞬で
「脱がすぞ。」
これ以上ショーツの上から弄り回していたら、擦れて痛くなり始めるかもしれないから。
その一言に、は慌てるようにして手でショーツを押さえる。
決意したはずなのに、この人に全てささげると。
だけど、いざそのときになると、どうしても恥ずかしさが抜けない。
「ま、待ってください!」
「この状況でお前、それは無いだろ…!!!」
「自分で脱ぎますから!先輩ちょっと目つぶ」
「嫌だ!俺が脱がす!」
「ヤダって、そんな駄々っ子みたいに…あーっ!!」
真弘はの手を振りほどいて、白いショーツを強引に引き下げる。
やや薄めの毛が見えて、さらに引き下げると、とうとうその部分があらわになった。
秘部と、そこに触れていた布の間に透明な糸が繋がっている。もう少し引っ張ると、糸はぷつんと切れた。ショーツ片手に思わず生唾を飲み込む。
じろじろ見ないでくださいと恥ずかしがるの意見に耳は貸さず、そこを凝視しながらショーツを足から完全に引抜いてベッドの下に落とす。
とうとう彼女は全裸になった。
部屋の中だというのにまぶしいと思ってしまうほど白い肌。程よく付いた肉は柔らかくて、触るだけで気持ちいい。
本当に穴が開いてしまうんじゃないかと錯覚してしまうほどの視線を感じて、はかつて無いほどの恥ずかしさに襲われる。
「で、電気消してくれませんか。」
「何でだ。」
「恥ずかしいからです。」
「恥ずかしがっとけ。可愛いから。」
「かっ、可愛くなんてな―――っ!!」
真弘はの願いを無視して、秘部にそっと指を這わせる。彼女は「ひゃっ」と小さく悲鳴を上げて黙った。
そこはもう十分すぎるほど濡れそぼっていて、ぬめる粘液が指に絡みついてくる。
今までの愛撫が気持ちよかったのだろうか。初めてにしてはやけに敏感な体のつくりに安堵する。
最初は感じにくくて苦痛を感じる人のほうが多いのだ。
この様子なら、そこまで痛い思いをさせなくても済むかもしれない。
右手で胸をもみながら、左手の人差し指をそっと入れてみる。万が一のことを考え、今朝方爪を切っておいてよかった。
緊張にこわばるの体。これでは痛くないものも痛くなってしまう。
「今すぐ入れるわけじゃねーから安心しろ。とにかく力抜け。」
「はい…。」
の体からすっと力が抜けるのが分かる。
まだ入り口付近だった指をもう少しだけ奥に差し込むと、無数のヒダがまとわり付くように指を締め付ける。
やっぱり狭い。
少しだけ中を擦るように出し入れしてみる。
「痛いか?」
「大丈夫、です。」
一本だけで痛いといわれてしまったら前途多難だ。案外いけそうなことにほっと一息つく。
少しだけ強く、中を広げるように指を動かしてみる。
中を擦るたびに、の口から浅い呼吸が生まれる。
「んっ……」
ある一点を掠めたとき、は艶っぽい声を上げた。腰が軽く浮いている。
「ココ、気持ち良いのか。」
「わ、分からないっ…」
真弘はさっきの場所を再び擦る。
今度は念入りに、何度も。
小刻みな指の動きはの体に異変を起こす。
今まで異物が入ってきたとしか思えなかった下腹部が、今の場所を真弘に弄られた瞬間、きゅんとした。
途端に自分の中から何かがジワリと湧き出てくる。初めての感覚には当惑した。
これが気持ちいいというものなのか。
そこばかりを集中的に擦られていると、だんだんムズムズしてくる。
無意識のうちに太ももを擦り合わせて、真弘の腕を締め付けてしまった。
真弘がニヤリと微笑んだのだが、そんなことに気づく余裕なんて無い。
「なぁ、今何本入ってると思う?」
何が、どこに。
完全に主語が抜けているが、口にしなくても丸分かりだ。
当然1本だと考えていたのだが、真弘が秘部からズボリと引抜いて眼前に持ってきた指は2本だった。
なんだかよく分からない液体に濡れそぼって、怪しく光っている。
コレが自分の体の中から出来た蜜―――。
改めて見せられると、顔から火が出そうになるくらい恥ずかしい。
「お前のココ、もうグチョグチョだぜ。」
「そんなっ…あっ。」
恥ずかしいことをいちいち言わないで欲しい。
抗議の声を上げる暇を与えず、再び2本の指が突き入れらる。
真弘は何度も何度もかき混ぜた。念入りに、傷つけないように、と。
さっきまで緊張していたの体はすっかり力を失って、真弘にされたい放題だ。
全身がほのかなピンク色に染まっていく姿はとても可愛らしく、真弘の欲情を煽る。
いい加減ズボンがきつくなってきたと感じて、片手でベルトを外した。
その間も秘部を弄ることはやめない。
ジッパーを下げて、ズボンも下げるのと一緒にトランクスも脱いで、ガチガチに固まった自身が元気よく姿を現す。
散々焦らされて、最高潮に勃ち上がっている。正直自分で見ても可愛いとは思えない代物だ。
コレを見て、はどう思うだろう。気持ち悪がるだろうか、驚くだろうか。前者だったらちょっと悲しい。
真弘が何かをしていることに気づいたは視線を下に向けて、ぎょっと固まった。
生まれてはじめて見る異性のソレ。上半身の裸なら何度も目撃したが、下半身をこんなにも間近で包み隠さず見るのは初めてのこと。
たまたま風呂場で拓磨と真弘の裸を見てあらぬ誤解をしたことがあったが、あの時二人はちゃんとソレを布で隠していた。
小さい頃、父親と一緒にお風呂に入ったときに見たソレは、こんなに禍々しいものではなかった。
まるで別物のように姿かたちが変わるんだなと関心する一方で、再び緊張が湧き上がる。このサイズがあそこに入ると思うと、正直怖い。
「選ばせてやる。今入れられるのと、もっと弄られた後で入れられるの、どっちがいい?」
真弘としては今すぐにでも入れたい。だけどココは年長者の余裕を見せておかなければ。
そして何より、性急にことを運びすぎてを傷つけたくない。
言われては思う。コレだけ散々ぐちゃぐちゃにかき混ぜておいて、まだ弄ることがあるのか、と。
清乃のようにそういう知識に詳しいわけでもないから、これ以上の愛撫なんて想像もつかない。
真弘は二択しか提示しなかったが、実は言葉にされなかった3番を選ぶ手もある。3番、それは「拒否する」だ。
今が「やっぱり無理です。」と断ったら、おそらく真弘は言うことを聞いてくれる。
実際、真弘はそう言われたらやめるつもりでいた。かといって本当に今ここで拒否されたらかなり辛いので、退路を断つために言わなかっただけだ。
真弘は静かに待つ。待っている間も熱は冷めない。むしろ募るばかりだ。
今すぐ無我夢中でかき抱いてしまえたらどれだけ幸福か。
だけど、待つ。愛しい人を傷つけたくないから。
「…入れて、ください。」
小さな呟きはかすかに震えている。声だけじゃなく、体も。
鬼切丸との戦いで命を賭したときとは違う不安がに襲い掛かる。けれども覚悟を決める。
それを落ち着かせるように、真弘はそっと口付けを落とす。
もう、再確認はしない。
「、痛かったら我慢せずに言えよ。」
のそこは音が出るほど濡れているが、何もしないで入れたら自身共々痛むだろう。
グチョグチョにぬれた入り口に自身を数回擦り付ける。
入り口がキュッと狭まったのが分かった。
サイドテーブルの引き出しからこの日のために用意していたゴムを取り出して、目にも留まらない速さで付ける。直接入れたいけど、こういうことはきちっとしておかなければ気がすまない性質だ。
もう一度蜜が溢れるそこに擦り付けて十分塗らしてから、小さい入り口に先端を押し付けた。
「力抜いとけ。」
が返事をする暇もなく、先端がグッと押し付けられる。
生まれて初めての侵入、思わずは悲鳴をあげそうになって、こらえるように手で口を押さえた。
やっぱり痛いものは痛いか。苦痛で眉間にしわを寄せている姿が可哀相で、真弘は腰を止める。
まだ先端すら入りきっていないのに、全部入れたらどうなることか。
「大丈夫か?」
「っ…く、大丈夫です、止めなくていいです、からっ…。」
指とは比べ物にならないものが、の中を押し広げようとしている。
痛みのせいでこわばってしまう体をどうにかしてほぐそうとしても、なかなかうまくいかない。
なんだか泣きそうになって、だけど心配そうにしている真弘の前では泣きたくなくて、必死に我慢する。
「先輩、ひとおもいに…っ…。」
「んなことしたら裂けるだろーがっ!!!」
思わず乱暴な言葉が口をついて出る。だけどそれはを心配しているからこそ。
体から力を抜くのを手伝うために、耳に唇を寄せ、ふちをぺろりと舐める。
軽く齧ってやると、手の甲で隠されたの口から「ハァ…ッ」と吐息が漏れた。
息が吐き出されるのに合わせて、ゆっくりゆっくり自身を進めていく。
中からあふれ出てくる蜜の助けも手伝って、なんとか先端が入りきった。
ココまで来れば、あとはまぁなんとかなる。ちょっと力を加えて腰を前に押し出せば、内壁を擦りながら奥へ奥へと挿って行く。
「ぁ―――っ…!」
苦しそうに息を吐いていたが、ビクリと体を震わせて、息を止めた。
「?!」
まさか痛みのショックで呼吸が止まってしまったのだろうか。
驚いて、のけぞる彼女の頬を軽く叩く。
息はすぐさま吹き返した。
浅い呼吸が胸を上下させている。
「もう、大丈夫です。」
は微笑んで、真弘の首にそっと腕を回した。
抱きしめるように、優しく。
しっとりと汗でぬれた指先は、慈しむように真弘の後ろ髪をなでる。
中に感じる真弘の存在は痛くて苦しいけれど、やっと一つに繋がった。
「先輩…大好き…。」
何もかもが愛しくて、深いところで繋がりあえたことが嬉しい。
痛みも苦しみさえもしのぐ幸福感と温もりに包まれて、は真弘と本当に繋がりあえたと実感した。
幸せなのは真弘も同じ。最愛の女性をこの腕に抱きしめ、一つになれたのだから。
玉依姫を守るためだけに生まれ、生かされ続けてきた18年。夜空に浮かぶ月を眺め、まだ見ぬ大陸に思いを馳せ続けた。叶うことなど無いと分かっていながら。
に初めて出会ったときは、こんな何も知らない、おまけに力の無い娘のために身を犠牲にしなければならないのかと、己の宿命を呪った。のことも好きになれなかった。
けど、アリア達との戦いでそれは変わった。
恐怖と使命の狭間に揺れながら立ち向かった、命を賭した戦い。圧倒的な敵の強さに手も足も出なくて、全て終わったと思った。
しかし、は使い捨ての存在であるはずの自分をかばいながら、果敢にも立ち向かっていったのだ。
守られるだけの存在であるはずが、命を張って、守ってくれている。
それは不思議な感覚だった。同時に、真弘にとっては「ただの玉依姫」という存在ではなくなった。
一人の女性として、本当に好きになった。
恐怖に震えながらすごしてきた18年。
守護者の中で唯一命を引き渡すことが定められていた、烏としての宿命。
逃れたいとばかり思っていた宿命を、初めて受け入れることが出来た。
になら、命を捧げていいと、心の底から思えたのだ。
お互いの命を賭して、常世の目前まで魂を注いで、全てを終焉に向かわせることが出来てからというもの、愛しさは募るばかり。
こんなにも愛せる女性は、もう二度と現れないだろう。
だから精一杯、大切にする。
時には怒って、喧嘩して、悲しんで、泣くこともあるだろう。
でもその一つ一つが、二人にとっては大切な一瞬一瞬になるはずだ。
もちろん、今この瞬間だって。
「、―――愛してる。」
もう二度と離さない様に、離れないように。
一つになれた幸せをかみ締めて、胸のうちから言葉を紡いだ。
この愛しさは、一生消えない。