覚悟をアナタに

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覚悟をアナタに

 空には憎らしいくらい程カラッとした太陽が輝いている。
 家を出てものの数分もしないうちに全身からとめどなく汗が噴出してきて、真弘は小さく舌打ちした。
 いくら夏生まれでも、ここまで暑くては笑っていられなくなる。
 せっかくおろしたてのタンクトップを着たのに、この様子じゃ家に戻ってきた頃にはもう一度着替えることになりそうだ。
 幸い、着替えの候補は昨日さんざん考え抜いて選び出しておいたので問題ない。
 今はベッドの下でひっそり形を潜めているだろう。
 というのも、これからをつれて帰り、その後万が一にも服が汚れるような展開になったときのことを考慮した着替えなのだ。
 今日、両親は旅行に出かけている。だから思い切ってを誘ってみたのだ。家に泊まりに来ないか、と。
 平常を装って言ったものの、心臓は今にも爆発しそうなくらい高鳴っていた。
 まだ高校のときの頃のほうが大胆だったかもしれないと思う。半年間会わないだけで、ずいぶん小心者になってしまったものだ。
 は一瞬言葉に詰まって、だけども頷いてくれた。ほんの少しだけ頬を赤らめて。
 だから、真弘は余計家に着いた後の展開に期待してしまった。
 いい年頃の男女が、しかも何度も口付けを交わした仲の男女が二人だけで一晩過ごす。大人の行為が待ち受けているのはごく自然な展開だ。
 今までも何度かそういう雰囲気になったことはあるけれど、結局最後までいくことはなかった。
 というか、意図的に行わなかった。
 唇を重ねるだけで、抱きしめあうだけで、十分幸せだと思っていたから。それだけで繋がっていると感じられたから。
 何より、妙な責任感のようなものが最後まですることをためらわせた。
 自分は大人だけど、はまだ子どもだ。からしたら、大して精神年齢も肉体年齢も変わらないだろうと突っ込まれるのだろうけど。
 やりたいけど、でも、年上であるという責任感が歯止めをかける。
 不安を感じ始めたのは、自分のものだという印をの体に何一つ残さずアメリカに旅立ってからだ。
 そういえば、そもそも自分たちには恋人同士になった記憶も無い。
 お互いに好きだという気持ちが通い合っていることは確実なのに、付き合うという一言が一切出てこなかったから。
 いつだったか勢いで「俺の女」宣言はしてみたけど、実のところはどう思っていたのだろう。もし迷惑だと思われていたならどうしたものか。
 それには可愛い。絶対に本人には言わないけれど、外見と性格の両方を見ても可愛いと思う。
 そばに居ればに近寄る虫共なんて一瞬で蹴散らる。だけど離れていたら、それが出来ない。
 今がどんな状況の中に居るかも分からないし、の気持ちも分からない。
 もしも、もしもだ。
 アメリカに行っている間にの気持ちが自分から離れていたら、どうしよう。
 1年と宣言しておきながら半年ほどで村に戻った理由は、路銀が尽きそうだったが3割程度、7割はのことが心配でしょうがなかったからだ。
 胸を張って自分の女のことを信頼してやれないのか。一体何度自分自身に問いかけたか。もう覚えていない。
 堂々としていようと思っても、アメリカでいちゃついているカップルを目撃するたびにの顔が浮び、心配が募ってたまらなかった。



「俺って小せぇな。」



 身長だけじゃなく、器まで。
 対比物に身長が出てきたことにイラついて舌打ちする。
 けれども軽い足音が聞こえて、ハッと顔を上げた。
 夏の日差しに透けてしまうのではないかと不安を呼んでしまう真っ白なワンピース。日差しをさえぎる麦藁帽子。この村に来てから、少しだけ田舎スタイルが板についてきたと思う。
 ワンピースに負けず劣らずな白い素足に緑色のサンダルがよく映えている。
 まぶしいと思った。手を伸ばせないほど。
 を見て固まって動けなく真弘に、は遠慮なく近寄ってくる。



「こんにちわ。暑いですね。」
「お、おう。」



 暑いなんて口にするな、余計暑くなるだろーが。
 頭に浮かんだ軽い切り替えしではなく、やけに曖昧な返答しか出来ない。
 いざを目の前にしてみると、これからの展開を考えて緊張してしまう。
 真弘の家に泊まることを承諾してくれた時点で、あれやらこれやらをするかもしれないということを、目の前の少女は理解しているのか。
 出来るだけ我慢はしようと思う。せめて最後まで行かないように。
 葛藤を悟られないよういたって平常を装って、手を差し伸べる。
 だけど、そういや今汗まみれだったなと思い出して引っ込めかけた手を、はすかさず握り締めた。
 やけに強く握り締められて、一体どうしたのかと顔を見る。は笑顔だ。だけど緊張しているように見えるのはただの思い込みか。
 その緊張が、家についてからの大人な展開を予期してのことなのか、それとも真弘を振るためのものなのか、真弘にはちっとも分からない。
 だけど、好きでもない人間の手をこんなに硬く握るなんてことはないだろう。そう言い聞かせ、来た道を戻り始める。
 面倒だから守護者の力を使ってしまおうか。
 一瞬そんな考えが頭をよぎって、けれども家に着くまでにもう少し時間が欲しくて、結局歩く。
 家についたころには、頭の上からつま先まで汗でびっしょりだった。



「お邪魔しま〜す。」



 の声が木霊する。無人の家からは当然返事なんて帰ってこない。
 は真弘を見た。家の人は?という疑問をこめて。
 親が不在なのを言っていないことに気づいた真弘は、あくまで冷静に言う。
 ここで不審な態度をとってしまっては、に不安を与えてしまうから。



「誰も居ねーよ。両親ともども旅行中。」 



 一瞬だけ隣の彼女が息を飲んだのが分かった。酷く緊張している。
 何かいい言葉が浮かぶわけでもなく、数秒の沈黙が二人の間に流れる。
 真弘がちらりと伺い見ると、ばっちり大きな瞳と視線がぶつかり合った。けれどもが先に目を反らしてしまう。



「せ、先輩の部屋ってどこなんですか?」
「二階の一番奥の部屋だ。先行ってクーラー入れとけ。」
「分かりました。」



 たんたん、軽快な足音が二階に上っていく。
 ふと下から見上げた真弘の目に、白いワンピースの裾からのぞく足首から太ももまでの素肌が見えた。
 まるで陶器のようになめらかで、触れば相当すべすべして気持ち良いだろう。太ももを更に上っていけば、そこは男にとっての聖域。
 秘められた部分を覆う布は、ワンピースとお揃いの白でレースが付いている。案外可愛らしい趣味をしているなと思う頭の端っこで、警鐘が鳴る。
 たった今家に着いたばかりなのに、初っ端から盛るな、と。
 危うく熱を持ち始めていた自身をしかりつけて、台所から麦茶とちょっとしたスナック菓子をお盆に載せて二階に上がる。
 はどうやら迷うことなく真弘の部屋にたどり着けたようで、ドアが僅かに開いていた。
 ちゃんと閉めなければクーラーは効かない。文句を言ってやろうかとドアに近寄ると、ノブに触れるより先に内側から開いた。
 今まさに出てこようとしていたとぶつかりそうになって、お盆の上の麦茶を注いだグラスが大きく揺れる。
 これでお互いが濡れてしまったら、風呂に入ろうと誘えるのだが。
 まるで真弘の考えを読んで裏をかくかのように、麦茶はぎりぎりのところでこぼれない。
 ちょっと残念だと思いつつも、やましいことを考えてばかりな自分に凹んだ。
 は驚いたように固まっていて、けれどもその場にいると真弘の入室の邪魔になることに気づいて部屋の奥に引っ込む。



「付け方分かったか?」



 クーラーからは静かな起動音が聞こえる。聞くまでもなかったようだ。
 コクコクと頷く彼女の横をすり抜けて、小さいテーブルの上にお盆を乗せる。
 まあ適当に座れと言って自分はベッドの上に座ると、は側に近い床の上にぺたんと座った。
 自然とが真弘を見上げる形になる。
 上目遣いにちょうどかぶらないよう、切りそろえられた前髪。ほのかに明るい色味をおびいていて、触ればとてもやわらかくてサラサラなことは知っている。
 真弘はの髪が大好きだ。自分の髪もそこらへんの女子から羨ましいといわれるほどやわらかくてストレートだが、は更に極上の髪質だから。
 気がつけば手が伸びて、指先にやわらかい一房を摘み取っていた。



「何ですか?」
「相変わらず綺麗な髪だな。」



 本心を包み隠さず漏らす。珍しく褒めたせいか、はちょっと驚いたように目を見開いて、次の瞬間には顔を赤くしてうつむいた。
 小さい声で「ありがとうございます」と呟いてくる。
 やっぱり今日はやけに大人しいなと思っていたら、不意に頭を撫でる手を掴まれる。
 嫌だったのだろうか。やりすぎたと後悔するよりも早く、がすばやく立ち上がってベッドの上に上ってきた。
 そして真弘の体を乱暴にならない程度にベッドに押し倒すと、腰の上に馬乗りになる。



「ちょ、?お前何やってんだよ!!」



 それでなくても今日はいろんな意味で思考回路が危ないというのに、こんな風に、ピンポイントでまたがれては。
 さっき必死で沈めていた自身が再び熱を持ちそうになって、待て待て待てと自分とに向かって言う。
 は顔を真っ赤にさせて、それでも退こうとしない。
 じっと真弘の顔を見下ろして、口を開く。



「先輩、私たち付き合ってるんですよね?」



 かすれるような声で呟かれて、はっとする。
 そう言ったの顔は不安で今にも泣き出してしまいそうで、真弘の回答によっては本当に涙を流すんじゃないかと思われた。
 ああ、そうか。
 きっとも、自分がアメリカに行っている間、同じように不安だったんだ。
 恋人同士という証も無いまま、離れ離れになってしまった半年間。
 不安定な土台の上で、お互い悩んで不安で苦しんでいたんだ。



「バーカ、当たり前だろうが。」



 たった一言、たった一言でいいのだ。不安を拭い去るのなんて。



「俺はお前が好きだ。」



 それは不安を取り除く魔法の言葉。
 は今にも泣き出しそうな顔で、微笑んだ。
 この世で一番の幸せに出会ったような、美しい微笑だった。
 いとおしい、どうしようもなく。
 真弘は馬乗りになられたまま体を起こして、またがるを抱きしめる。
 出てくる前に1度シャワーを浴びたが、体は汗に濡れているから臭くないだろうかと一瞬不安になる。
 だけど今はそんなこといちいち気にしていられる余裕なんてなくて、の首筋に顔を埋めると、シャンプーの香りだろうか。ほのかに甘い花のような香りが鼻腔をくすぐる。
 やっぱり女の子だな、と当たり前のことを再認識していると、のほうから唇を寄せてきた。
 グロスも何も塗っていない唇だけど、のそれはすごくやわらかくてしっとりとしていて、触れ合うたびに気持ちいい。
 軽くついばむように何度も何度も押し付ける。だけどそれだけじゃ足りなくて、無意識のうちに舌を差し込む。
 ぬめる舌の進入を感じ取って、は一瞬だけビクリと体を震わせた。
 けれどもおずおずと舌を伸ばしてきたから、逃がさないようにからめとって、舌で愛撫する。
 気がつけば夢中になっていて、唇の端からお互いの唾液が漏れるのも気にせずむさぼりあう。
 先にが少し苦しげに唇を離す。名残惜しくて追いかけようとすると、はにっこり笑って真弘が起き上がれないように両腕を布団に押し付けた。



「お前、先輩の上に乗っかるってのはどういうことか分かってんのか。」
「分かってます。」



 やけにはっきりと言い切るは、強気な割には恐る恐る手を伸ばして真弘の太ももをツ…と撫でる。
 ジーパンの上からでも、そのやけにじらすようなゆっくりとした撫で付けがくすぐったくて、でもそれ以上に感じて、真弘は小さく息を飲み込んだ。
 これはもしかして、もしかしなくても、がしてくれるということなのか。
 期待とは裏腹に、はぴたりと手の動きを止める。
 よりにもよって、ジーパンの前をぐいぐいと押し上げる我が息子の上で。



「先輩、遅くなってごめんなさい。」
「何が。」
「お誕生日、先週だったんですよね。」



 ああ、そういえばそうだっけ。
 壁にかかっているカレンダーは昨日ようやく溜め込んでいた半年分を切り取ったばかり。
 ゴミ箱の中にはまだ六枚分のカレンダーが適当に突っ込まれている。
 8月17日は確かに先週。自分自身すっかりそのことを忘れていた。
 は少し申し訳なさそうな表情で、ごめんなさいともう一度言う。
 だけど真弘が日本に帰ってきたのが18日だったから、連絡を取り合う手段を持たなかったが謝るのはおかしいことだ。
 実際自分でも忘れていた誕生日。それを覚えていてくれたというだけで嬉しい。



「で、プレゼントいろいろ考えたんですけど、先輩が欲しいもの全然分からなくて。」



 真弘は守護者の中では割とアクセサリーや服装に気を使っているほうだ。だからはそれなりに悩んで、身につけられる装飾類を渡そうかと思った。
 だけどつい先日までアメリカに居た彼のことだから、相当いろいろ集めている気がしてやめた。
 この村や近くの街でアメリカのアクセサリーをしのぐものはあると思えなかったし。
 何よりああいうものは高い。悲しいことに自分は受験勉強のおかげでバイトをしていない貧乏学生。財布から出せるお金では、きっと真弘が喜ぶものは用意できないと考えた。
 今が冬ならマフラーなんてのも有りだっただろう。だけど残念なことに真夏。手作りのニット物なんて渡したら、ただの嫌がらせだ。
 散々悩んで悩んで、だけどいいものは浮かんでこない。
 自分だけの考えではどうにもならないと思って清乃に相談したところ、彼女は笑って言った。
 


『彼氏さんとはまだなんでしょ?なら自分をあげちゃいなよ。』



 聞いた当初は「一体何言ってるの!!!」と真っ赤になって反論したが、1晩中考えた結果、もうそれしかないと思った。
 お互いがまだ高校時代の頃、真弘が最後までやるのを我慢していることに、それとなく気づいていた。
 そしてその理由も。
 真弘は年上であることに変な責任感をもって、年下であるが大人になるのを待っていたのだ。
 我慢させていたことを申し訳ないと思う反面、少しだけ安心していたのは事実。
 だけどはもう18になった。まだ学校は卒業していないけど、18になったのだ。
 もう、いいかなと思った。
 真弘が本当に自分のことを好きでいてくれているのなら、自分の全てをささげてもいいと。
 だから…。



「私を、もらってくれますか?」



 緊張で声が震える。信じられないくらいの恥ずかしさが、体の内側から顔に集中する。
 動揺を知られたくなくて毅然としようにも、真弘の腕を拘束している手が震えてしまう。
 真弘はの口から発せられた言葉に我が耳を一瞬疑って、頭の中で反芻する。
 私をもらってくれますか。
 今のシチュエーションでこのセリフ。もう、食べてくださいと言っているようにしか聞こえない。
 この決断に至るまで、の中では相当葛藤があっただろう。
 本当にいいのだろうか。数秒間考えて、今までに最後までしなかった理由を思い出す。
 先輩として、大人の男として、が卒業を迎えるまで待つ覚悟をしたのだ。
 だからいっぱい我慢して我慢して、先に卒業を迎えて、更にが卒業するまでの一年を我慢するためにアメリカに旅立った。
 結局諸々の事情で半年しか我慢できなかったのだが。
 まだ卒業を迎えていないは、してもいいと言う。
 先輩という妙な責任感が、理性が、暴れだそうとする欲望を必死に抑えつける。
 だけどはすごく不安そうな顔をしていた。今ここで断れば、拒絶されたと思って酷く傷つくだろう。



「いいのか。」



 思ったよりも低い声が出る。緊張しているのは何もだけじゃない。自分もだ。
 は真弘の最後の確認に、迷わず頷いた。
 その瞬間、真弘の頭の中で何かがガラガラと音を立てて崩れていく。それは、長い間彼を縛っていた理性。今ようやく念願の行為に至ることができ、かつて無いほどの興奮が体を埋め尽くす。
 の腕を掴み取って、体の下に引き倒す。
 今度は自分がを見下ろすポジションだ。
 二人を隔てる邪魔な布をいち早く取り去りたくて、豪快にタンクトップを脱ぎ捨てる。のワンピースを脱がすのは少しだけ名残惜しかったが、一刻も早く肌に直で触れたい。
 結局衝動に突き動かされるまま、膝丈のワンピースを下からガバリとたくし上げる。は抵抗するどころか手伝うように手を上げてくれたので、一瞬で抜けた。
 白いワンピースに隠されていた素肌が部屋の電光の下にさらされる。ワンピースと同じ、穢れの無い真っ白な下着が胸と秘部を覆っている。
 こちらは暫く見ていたいと素直に思ったので、身につけさせたまま抱きしめて、首に顔を埋めた。耳に口を寄せて息を吹き込めば、んっ…と悩ましい声が上がる。
 今度は空気の代わりに舌を入れると、は体をビクリと背をのけぞらせた。



「やっ、先輩、くすぐったいっ…!!」
「そうか、じゃあもっと舐めてやるよ。」
「そんなっ、ぁっ!!」



 面白いほど体が跳ねるので楽しい。
 耳のふちをいやらしくねっとりと舐めて、反応を見ながら舌を差し込む。その間にも手はブラジャーの上から胸を揉みしだく。やっぱりブラジャーは邪魔だ。
 背中の後ろのホックを片手で外すと、が小さく「あっ」と声をあげて、腕であらわになった胸を隠そうとした。
 だけど意外と豊かな乳房は腕ごときでは隠しきれない。



「見せろ。」



 手を布団に押さえつける。乳房はフルリと波打って、その姿を真弘の目の前に現す。
 ツンと尖った先端。ほのかにピンク色を帯びていて可愛らしい。ちゅ、と吸い付くと、の口から「あぁっ」と悲鳴のような嬌声が上がった。
 乳首を苛めつつ、もう片方の胸を手でやわやわと包み込んで揉む。時々強くすったり軽く噛むと、それに合わせて腰が浮く。
 乳房への愛撫をやめず、余った手をそっと腹から下に降ろす。
 太ももの内側を散々撫で回したあとでショーツの上から軽く秘部に触れると湿っていた。



「染みになるかもな。」
「買った、ばかりなのに…っ。んっ。」



 今日のために、わざわざ清乃と一緒に街に出て買った下着。
 清乃は一体何を期待しているのか、本来隠すべき場所に大穴が開いている真っ赤な下着や、もはや紐としか思えないヤラシイ下着を次々と押し付けてきた。
 つれてくる人を間違えたと思いつつ、彼女が自分の下着を選び始めた隙を突いて、この白い上下セットの下着をレジに運んだのだ。
 きっと真弘は清乃が選んだ下着を身につけたほうが喜んだだろう。だけどさすがにあんなものを身につける勇気はに無かった。
 清いことをアピールしようと思っての白色だったのだが、今は秘部からあふれ出る蜜にぐっしょりと濡れて透け、逆に真弘を煽っている。
 真弘は指の平で、ショーツの上からそこを何度も優しくこする。
 自分ですらろくに触れたことが無い場所を集中的に弄られて、は恥ずかしさのあまり、枕で顔を隠そうとした。
 だけどすかさず真弘の手が枕をベッドの下に放り投げる。
 眼下に組み伏せた愛しい女性。
 羞恥と得たいの知れない快感に赤く染まった頬、熱い吐息とあえぎ声、潤んだ瞳。全てが狂おしいほどに愛しい。
 だから隠させなんかしない、彼女の全てを、それこそ穴が開くほど見てやる。
 やっと、やっとこのときが来たのだ。
 願っていた瞬間はもうすぐ。
 最初から思っていたけど、この反応からしてが初めてなのは明らかだ。
 だから精一杯優しくしようと、心に誓う。
 半年分の空白を埋めるほどキスをして、抱きしめて、いっぱいいっぱい愛そう。
 二度と不安なんかにならないように、深いところで繋がりあおう。
 怖さを一生懸命隠そうとするを安心させるように、その額にそっと口付けを落とした。 

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